当科では2020年よりロボット支援腹腔鏡下手術を行っております。小児外科領域でのロボット支援手術は北陸では唯一、全国的にも先進的な導入です。
手術支援ロボットとは
できるだけ体に負担がかからず、できるだけ安全に行えるよう、手術は日々進歩を続けています。その代表的なものがより小さな創で治療が行える細い内視鏡や手術器具を用いた鏡視下手術です。さらに、鏡視下手術は、我々の担当である小さなお子様の手術では、小さな臓器を大きく拡大し、手術チーム全員で術野を共有できることが手術の安全性、確実性をも向上させてくれるというおおきなメリットがあります。このことから当科では以前より積極的に鏡視下手術をおこなってきました。
近年、この鏡視下手術に強力なツールが用いられるようになりました。それが手術支援ロボットです。金沢医科大学にはIntuitive社のda Vinci Xiが導入されています。
da Vinci Xiを用いた手術
通常の手術はベッドサイドに外科医や看護師が立ち手術をおこないます(写真1)。これは鏡視下手術も同様です。
一方da Vinciを用いた手術は従来のこのスタイルとは大きく異なります。写真2にあるように同様にベッドサイドに外科医はいますが、彼らは直接操作を行いません。これまで用いていた鏡視下手術と同様の器具にロボットを連結し(写真3)、執刀医は離れた操縦席から操作します(写真4)。こうして執刀医の操作通り連結された器械が動いて手術が進んでゆきます(動画)。
執刀医は実際の動きを確認できないため、ベッドサイドの外科医が厳重に安全を確認しながら手術を行います。




ロボット支援手術の利点
da Vinciを用いた手術は従来の腹腔鏡手術とどのように違うのでしょうか。当科で行っている腎盂尿管移行部通過障害(写真5)と先天性胆道拡張症(写真6)に対する手術の同じ操作の画像を比較しました。


鮮明な3次元画像
da Vinci Xiのカメラは従来の腹腔鏡で用いていたカメラとは大きく異なります。手術を行う外科医は上記の写真の様に顔がすっぽり覆われる器械に“没入”し、あたかも患者様の体内に入り込んだかのような立体的な画像を見ながら手術を行います。ここでは2次元の写真での提示になりますが、それでも従来の腹腔鏡の画像とくらべ明らかに鮮明な視覚情報が得られることがおわかりいただけると思います。
多関節器具による直感的な操作
従来の腹腔鏡での器具はまっすぐな形で、操作に大きな制限がありました。手術支援ロボットでは器具の先端部位にこれまでになかった関節があり、より直感的に操作を行えるようになりました。さらに手術支援ロボットでは手ぶれ防止機能があり、従来の腹腔鏡操作より緻密な操作が可能となりました。これらにより患者様の体のなかで臓器を縫い合わせる(縫合)といった複雑な操作をより安全に、容易に行えるようになりました。
ロボット手術の成績
当科で実施している腎盂尿管移行部通過障害に対する手術で比較すると、腎臓と尿管を縫い合わせる縫合の平均時間は180分から80分に短縮することができました。
ロボット手術のこれから
現在小児外科領域での保険診療が認められている疾患は腎盂尿管移行部通過障害と先天性胆道拡張症等一部に限られていますが、今後さらなる器具の発展により適応がひろがる見込みです。当科では泌尿器や消化器外科、産婦人科等成人診療科の患者様と同様に、小児の患者様にもこの新しい技術を用いたよりよい手術をうけていただけるよう今後も努めていきます。