核医学

保険適応

悪性腫瘍(早期胃癌を除き、悪性リンパ腫を含む)の病期診断若しくは転移・再発の診断又はてんかん、心疾患若しくは血管炎の診断

脳血流SPECT

SPECT検査は、Single photon emission computed tomography(単一光子放射断層撮影)の略で、ごく微量の放射性物質(RI:ラジオアイソトープ)を含む薬を体内に投与して脳の血流状態を画像化する検査のこと。特に認知症の診断の場合、従来のCTでは表わせなかった血流量の情報が得られるので、脳内の血流量が少なくなっている場所を特定し、認知症の疑いがあるかどうかだけでなく原因疾患まで推察することができる。

アルツハイマー型認知症であれば、主として後部帯状回〜楔前部、及び頭頂葉・側頭葉連合野皮質の血流低下がみられる。レビー小体型認知症では、アルツハイマー型認知症の血流低下に加えて、後頭葉の血流低下もみられる。

アルツハイマー型認知症:血流低下部位

ダットスキャン

ダットスキャンのSPECT画像は、線条体におけるドパミントランスポーター(DAT)の分布を可視化することで、ドパミン神経の変性・脱落を伴うパーキンソン病(PD)を含むパーキンソン症候群(PS)の早期診断や、レビー小体型認知症(DLB)の診断精度の向上、治療方針の決定に寄与する診断技術である。

正常例 パーキンソン病

核医学におけるゾーフィゴ治療

ゾーフィゴ:塩化ラジウム(Ra-223)注射液は、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療薬として開発された世界初のアルファ線放出放射性医薬品です。骨転移巣などの骨代謝が亢進した部位に集積し、アルファ線を放出することにより、近接する腫瘍細胞等に対してDNA二重鎖切断等を誘発し、部位特異的に腫瘍増殖抑制作用をもたらします。

適応対象:骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌

骨転移は、痛みや麻痺といった症状が発現するのにくわえ、骨折しやすくなる。こういった事象を骨関連事象(SRE)といい、一旦発生すると元に戻すのが難しい。骨折部位によっては寝たきりになったり、寝たきり状態が続くと誤嚥性肺炎を発症するケースもあり、患者の生活の質(QOL)を著しく低下する。ゾーフィゴは、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした第3相臨床試験(ALSYMPCA)にて、プラセボ(偽薬)に対して生存期間を延長することが示された。

ゾーフィゴ静注を投与される患者又はその家族の方に対しては、投与前に、本剤の効果、発現する可能性のある副作用とその予防・対処方法等、並びに、本剤が放射性医薬品であることについて十 分に説明し、同意を得てから投与を開始することになっている。

I-131による甲状腺アブレーション

Ⅰ-131 を用いた放射性ヨード内用療法による甲状腺全摘術(準全摘)後の残存甲状腺組織(remnant・レムナント)の除去をアブレーションと呼ぶ。甲状腺全摘術を施行した場合であっても,わずかに甲状腺組織が残存することが知られている。残存甲状腺組織の存在は,血清サイログロブリン値を用いた術後経過観察を困難にし得る。また,ハイリスクと評価され,甲状腺全摘となった症例においては,微小な腫瘍組織の残存による局所再発の危険性も否定できない。このような観点から経過観察や局所制御の妨げとなり得る残存甲状腺組織を完全に取り除くことが望ましい。

甲状腺ホルモン剤の休薬またはタイロゲン投与、ヨード制限が必須である。ヨード制限とは,ヨード含有率の高い食品の摂取を控え,ヨード含有率の高い薬品の投与を行わないことである。ヨード含有率の高い食品の摂取を控えて,できるだけヨード含有率の低い食品を摂取する食事を「ヨード制限食」あるいは「低ヨード食」と呼ぶ(以下ヨード制限食)

アブレーション時 6か月後
画像提供:金沢大学医薬保健研究域医学系・核医学教授 絹谷 清剛