【論文発表】精神神経科学、総合医学研究所 大井一高講師らの論文“Intelligence Decline between Present and Premorbid IQ in Schizophrenia: Schizophrenia Non-Affected Relative Project (SNARP)”がEuropean Neuropsychopharmacology誌に掲載されました

  統合失調症患者では、知的機能を含む広範囲にわたる認知機能の障害が認められ、その障害は機能的転帰と強く関わっています。統合失調症患者、その第1度非罹患近親者および健常者間において、認知機能は遺伝的な連続性を認めます。統合失調症患者において、病前から認められる知的機能障害や、発症後に確認される知的機能の低下 (病前の知的機能レベルからの低下)を呈することは知られていましたが、病気の経過中のどの時期に知的機能の低下が出現するかは、よく分かっていませんでした。本研究では、金沢医科大学精神神経科学にて遂行中のSchizophrenia Non-Affected Relative Project (SNARP)よりリクルートした125例の統合失調症患者、61例の第1度非罹患近親者および107例の健常者間で病前推定IQ、現在のIQ、知的機能低下の差異を評価しました。さらに、対象者を知的機能低下の程度に基づいて、知的機能が低下している Deteriorated群と知的機能が保たれている Preserved群に分類して、どのような要因がこの分類に寄与しているかを検討しました。

  病前推定IQ、現在のIQともに統合失調症患者、非罹患近親者および健常者群間で差異を認めました。健常者と比べて、統合失調症患者と非罹患近親者では、病前IQと現在のIQはともに低値を示しました。統合失調症患者と非罹患近親者間では、病前IQに差異はありませんでしたが、現在のIQは統合失調症患者で低値を示しました。また、統合失調症患者群のみ病前の知的機能レベルからの低下である知的機能の低下を認めました。非罹患近親者と健常者の大部分は、知的機能の低下を認めなかったため、非罹患近親者と健常者群では、知的機能が低下している Deteriorated群に分類される人は、ほとんどいませんでした。統合失調症患者と非罹患近親者群において、知的機能が保たれている Preserved群は、知的機能が低下している Deteriorated群よりも、高い教育年数を示しました。本研究結果から、統合失調症患者や非罹患近親者における病前知的機能レベルの障害は発症前から存在し、引き続いて起こる知的機能の低下は、統合失調症の発症時期周辺に生じることが示唆されました。病前知的機能障害と発症時/後の知的機能の低下には、それぞれ異なる病態が関わっている可能性があるため、さらなる研究が必要です。

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