尿路結石

腎・尿管結石とは

腎臓は、血液を濾過しナトリウム、カリウムなど体内の電解質を調節するほかに、血圧調整や造血ホルモン産生、ビタミンD活性化など重要な役割を持っています。また、尿素、クレアチニンなどの最終代謝産物を尿中に排泄することも、よく知られています。尿中にはカルシウム、シュウ酸、尿酸、リン酸など、尿路結石に関連する多くの物質も排泄されています。この結石関連物質が種々の条件下で腎臓内で結晶化し増大したものが、腎結石です。

尿管結石は腎結石が下降したもので、激烈な痛み(疝痛)を引き起こし急性腹症の原因の一つとして知られています。男性では15人中1人が一生のうちに1回は罹患するありふれた疾患です。男女比は2.4:1で男性に多く、40歳、50歳代に多く発生します。また、約半数の人が再発します。


図)尿路結石における部位別の分類

症状

腎結石のほとんどは痛みがなく、あっても鈍痛程度です。肉眼的に確認できる血尿や検診で判明する程度の顕微鏡的血尿の場合もあります。

尿管結石は側腹部の激痛(疝痛)のほか陰部、大腿内側への放散する痛みを出します。また、嘔気・嘔吐も生じることがあります。尿管結石が膀胱近接部まで落下した場合は、急性膀胱炎と同様の排尿終末時痛や残尿感、頻尿を来すことがあります。また、疝痛のあと尿管から膀胱へ落下した結石は、そのほとんどが尿道を通って体外に排出されます。

診断

検尿で血尿の有無を調べます。腹部レントゲン検査(KUB)でカルシウムを含む結石は容易に診断できますが、尿酸結石やシスチンの場合、レントゲン検査では不明のことが多く超音波検査やCTスキャンで診断します。このほか腎機能や炎症をチェックするための採血や24時間尿の検査によって基礎疾患の診断をする必要があります。

原因

尿の中のカルシウムやシュウ酸が多いと結晶化し、集まって結石を作るようになります。たとえば飲料水の摂取が少ないために尿が濃くなった場合やシュウ酸、カルシウムを多量に含む食品を食べた場合などです。また尿の停滞を来す尿路通過障害や長期臥床も原因となります。

結石の成分:尿路結石の80%以上は蓚酸カルシウムを含んでいます。また、感染が主な原因である燐酸マグネシウムアンモニウムや、尿酸、シスチンで20%を占めています。

内科的治療法

腎結石

小さな結石(5mm以下)の場合、水分を多量に摂取し自然排石を期待します。痛みがひどい場合や腎機能が障害される場合、大きな結石の場合は、下記の外科的治療法を選択します。

尿管結石

小さな結石(5mm以下)では利尿をつけ自然排石を待ちますが、排石までに疝痛発作が繰り返す時や水腎症、腎盂腎炎が増悪する時は外科的に治療する方がよいでしょう。

外科的治療法

PNL(経皮的腎結石砕石術)

背部から約1cmの瘻孔を腎臓まであけ、ここから内視鏡を挿入し結石を直視しながら鉗子で摘出する方法です。珊瑚状結石など比較的大きな結石の場合、ESWL(体外衝撃波腎結石破砕治療法)と併用することや、尿管狭窄があり破砕片の自然排石が期待できない場合などに実施します。当科では年間約10件施行しています。

ESWL(対外衝撃波結石破砕術)

この装置は体外で衝撃波を発生させ体内の結石のみに衝撃波を収束させ結石を細かく破砕するものです。ほとんどの結石はこのESWL単独で治療可能ですが大きい結石の場合はPNLを併用することがあります。また下部尿管結石ではTULを併用した方がよいこともあります。当院では年間約80件施行しております。


図)当院でのESWL機器(lithostar Plus®)
TUL(経尿道的尿管結石摘出術)

尿道から細い内視鏡を尿管内に挿入し、結石を摘出する方法です。従来は硬性尿管鏡といって『硬い』内視鏡を用いることが主流でした。最近では軟性尿管鏡、つまり『軟らかい』内視鏡を用いて手術を行っており、上部尿路に存在する結石にも適応は広がっております。当科では年間約30件施行しています。

※ プレステント:当科ではTUL施行の1-2週間前に、腎盂から膀胱までに軟らかいシリコン製の管(バイパスの役目をする『ステント』といいます)を留置し、手術成績の向上に取り組んでいます。

再発予防

水分(水、ほうじ茶などがお勧めです)を1.5リットル以上飲み、常に薄い尿にしておくことが必要です。明らかな原因があれば除去することが重要です。尿酸結石やシスチン結石の場合はお薬による治療法が有効です。