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【論文発表】腎臓内科学 藤本圭司講師らの「Comparison of the pain-reducing effects of EMLA cream and of lidocaine tape during arteriovenous fistula puncture in patients undergoing hemodialysis: a multi-center, open-label, randomized crossover trial」がPLos One誌に掲載受理されました。

内 容
【背景・目的】慢性維持血液透析患者にとって、透析毎の内シャント穿刺痛は切実な問題である。従来、本邦においては内シャント穿刺痛緩和を図るために外用麻酔薬であるLidocaine tapeが使用されてきたが、薬剤の皮膚浸透性が低いことから十分な鎮痛効果が得られない症例も少なくなかった。適応症の追加承認により2015年から内シャント穿刺痛緩和目的に使用可能となったLidocaine/propitocaine cream(EMLA)は、皮膚浸透性の高い外用麻酔薬であり、皮膚小手術等でその優れた鎮痛効果が報告されている。したがって、EMLAは内シャント穿刺痛緩和においても高い治療効果が予測される薬剤であるが、それを裏付ける十分なエビデンスはない。さらに、Lidocaine tapeよりも優れた治療効果が得られるかについては不明である。本研究は両薬剤の内シャント穿刺痛に対する治療効果を比較することを目的とする。
 
【対象と方法】両薬剤の治療効果を多施設共同ランダム化比較試験[実薬(Lidocaine tape)対照・非盲検・2群2期クロスオーバーデザイン・優越性試験]で検討した。国内6施設において週3回の維持血液透析を受けている66人の患者を対象とした。年齢、性別、baseline(外用麻酔薬無使用)の穿刺痛の程度ならびに糖尿病の有無を割り付け因子とした確率的最小化法を用いて、対象患者を1週間のwash out期間を挟んでEMLA、Lidocaine tapeの順に使用するSequence EL群(介入Ⅰ期:EMLA、介入Ⅱ期:Lidocaine tape)と薬剤使用順が逆のSequence LE群(介入Ⅰ期:Lidocaine tape、介入Ⅱ期:EMLA)のいずれかの群に割り付けた。主要評価項目である両薬剤の治療効果の比較は、100mm visual analog scale(VAS)で測定した介入Ⅰ期と介入Ⅱ期の穿刺痛改善量(ΔVAS)の時期差の2分の1[(介入Ⅰ期のΔVAS -介入Ⅱ期のΔVAS)×1/2]の平均値をSequence EL群とSequence LE群との間で対応のないt検定を用いて群間比較する解析法で評価した。副次評価項目はSF-36(acute form)で測定したhealth-related quality of life(HRQOL)および両薬剤の安全性とした。主要評価項目の解析は、intention-to-treatの原則に従った。
 
【結果】内シャント穿刺痛に対する治療効果はLidocaine tapeと比較してEMLAのほうが大きく、統計的有意差を認めた[治療効果の差10.1mm(95%信頼区間:5.9-14.2mm)、P=0.00001]。さらに、複数の先行研究の結果から、「急性痛」のVASにおけるMinimal Clinically Important Difference(MCID)は約10mmであると考えられることから、この両薬剤の治療効果の差は臨床的に意味のある大きさの差(臨床的有意差)である可能性が示された。一方、治療効果によるHRQOL変化量については両薬剤間で統計的有意差を認めなかった。以上の解析において有意な持ち越し効果および時期効果は認めなかった。また、両薬剤の有害事象は認めなかった。
 
【結論】慢性維持血液透析患者の内シャント穿刺痛緩和効果に関してLidocaine tapeに対するEMLAの優越性が示唆された。

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