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【論文発表】腎臓内科学・藤井愛・大学院生(横山仁・教授),生化学Ⅰ・砂谷優実・講師(岩淵邦芳・教授)らの「DNA damage in human glomerular endothelial cells induces nodular glomerulosclerosis via an ATR and ANXA2 pathway」がScientific reports誌に掲載されました。

【背景】
糖尿病性腎症の特徴的で診断的価値の高い病変である結節性病変には、Ⅵ型コラーゲン(以下COL6)が蓄積する。糸球体には、このCOL6分解酵素が存在せず病変の修復は困難である。最近、長期移植腎やたばこ腎症などにおいても、この結節性病変が観察され、いずれの疾病においても腎機能予後を左右する重大な病態である。しかし、その発生機序は不明な点が多く、結節性病変に対する効果的な予防・治療法はない。著者らは、糸球体内皮細胞の二重鎖DNA障害と糸球体内COL6蓄積との関連をこれまで見出している。
【目的と方法】
本研究では、各種腎疾患における糸球体内二重鎖DNA障害とCOL6蓄積との関連を検討するとともに培養ヒト糸球体係蹄内皮細胞(HRGECs)を用いてin vitroにおける二重鎖DNA障害とCOL6分泌機序を明らかとする。
【結果】
①ヒト腎糸球体病変におけるCOL6は、二重鎖DNA障害マーカー(γ-H2AX)と独立した関連因子であり、結節性病変を有する群では、お互いに正相関した(r=0.642, p=0.017)。
In vitroにおける検討
1) COL6分泌は、ATR阻害剤により低下した。また、ATR優位にDNA修復を生じるCPT処理細胞では、MMc処理細胞同様COL6分泌が惹起されたのに対し、ATMが優位に働くNCS処理細胞では、COL6分泌の増加はなかった。以上の実験結果より、DNA損傷後のCOL6分泌はATR依存性であることが示唆された。
2) ANXA2をノックダウンしたHRGECsにおいて、DNA損傷誘発後のCOL6の分泌は抑制された。また、Western Blotting法でANXA2の細胞内タンパク量の変化はなく、ATRおよびANXA2のCOL6分泌に対する相互作用の確認実験では、ATR阻害剤およびANXA2siRNA処理したCOL6陽性細胞の割合は、ATR阻害剤処理群またはANXA2siRNA処理群と差はなかった。以上の結果よりANXA2は輸送蛋白として働き、ATRが直接的あるいは間接的にANXA2に作用し、COL6分泌において両蛋白質が同経路で機能する事を示唆した。
【結論】
今回の研究結果から、糸球体内皮細胞の二重鎖DNA障害とCOL6蓄積は、各種腎疾患においても確認された。また、糸球体内皮細胞二重鎖DNA障害後のCOL6分泌はATR依存性に惹起され、DNA損傷が直接的あるいは間接的にATRを介しANXA2の活性化を誘導し、COL6分泌に寄与する可能性が示唆された。

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