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【採択】総合医学研究所 加藤 友久 講師/東京大学医科学研究所「2021 年度国内共同研究」

研究課題:患者由来及び遺伝子改変 iPS 細胞を用いた脳オルガノイドの作製によるコケイン症候群の神経病態のモデル化
 
 コケイン症候群(CS) は主徴候の一つとして光過敏症を呈するが、その分子基盤として患者由来の細胞は紫外線損傷 DNA に対するヌクレオチド除去修復(NER)機構の転写共役修復(Transcription-coupled NER; TC-NER)経路に異常があることが明らかにされている。CS の病態のモデル化を目指し、患者の持つ変異を模倣あるいは遺伝子を欠損したモデルマウスが作製されてきた。CS モデルマウスでは、DNA 修復系の異常と紫外線過敏症はみられたものの、神経系の異常は非常にマイルドであり CS の患者が呈する顕著な障害はみられない[van der Horst et al. Cell. 1997; 89(3): 425-35.|van der Horst et al. DNA Repair (Amst). 2002; 1(2): 143-57.]。また、最近、患者の変異を模倣した遺伝子改変ラットが作出され、CS の神経系の異常の一部は示すものの見た目と行動は正常である[Xu et al. Cell Rep. 2019; 29(4): 800-809.]。本研究によって、CS の患者にみられる神経病態のモデル化を成し遂げることが期待される。
 更には、上述の成果を発展させてその分子基盤を明らかにすることで、神経系においてヒトに特有な高次生体制御機構の発見に繋がることが期待できる。CS 遺伝子産物である CSB は TC-NER だけではなく、転写あるいはクロマチン修飾への関与も示めされており、ヒトの神経系に特有なエピジェネティカル制御機構を明らかにできることが期待される。
 CS は、我が国においては、「難病法」によって指定難病(公示番号192)に指定され、現状では根治療法がない。本研究によって CS の病態がモデル化できれば、創薬や治療法の開発に繋がることが期待される。

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