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【論文発表】頭頸部外科学 岸本 和大助教の論文「Ppp6c deficiency accelerates K-ras G12D induced tongue carcinogenesis」がCancer Medicine誌に掲載されました。

 本研究の目的は、皮膚がんのがん抑制遺伝子として同定されたプロテインホスファターゼ6の遺伝子(Ppp6c)が、舌がんでも抑制遺伝子として働くのかを明らかにすること、その機能がある場合は発がん抑制のメカニズムを明らかにすることが本研究の目的である。
 タモキシフェン(TAM)投与により、K-rasG12D発現が誘導できるマウス(Kマウス)と2重変異(K-rasG12D発現+Trp53欠損)が誘導できるマウス(KPマウス)を作製し、それぞれの舌腫瘍発生に対するPP6遺伝子(Ppp6c)欠損の影響を調べた。Kマウスの舌で、K-rasG12D発現に加えてPpp6cを欠損させると早期に上皮内癌が発症し約2週間で20% の体重減少をきたし安楽死処置となった。一方でK-rasG12D発現のみでPpp6cが正常の場合はほとんど野生型の舌と区別がつかなかった。この腫瘍組織に関して、リン酸化アレイおよび免疫組織学的解析により、KRAS(G12D)の下流(ERK、AKT)とPP6の標的(DNA修復、NFkB経路)に関して調べた。KRAS(G12D)の下流に関しては、ERK-ELK-FOS axis、AKT-4EBP1 axis、AKT-FOXO-CyclinD1の活性化が認められた。そして、PP6の標的に関しては、gH2AXの蓄積とNFkB経路の活性化が認められた。一方で、KPマウスにおいて、K-rasG12D発現とTrp53欠損に加えてPpp6c欠損させて発生した舌腫瘍でも、Kマウスのそれと比べて、発生時期、病理組織学的所見ではほぼ同じであった。この結果から、マウス舌において、Ppp6c欠損はKRAS(G12D)依存的な腫瘍化の増強作用をもつこと、そしてその影響に比べて、Trp53欠損の影響はほぼ無視できる程度だということが分かった。次に、トランスクリプトーム解析を行った。iPathway guideの解析により、KマウスでもKPマウスでも、Ppp6c欠損によって共通に大きく活性化する KEGG Pathwayとして、Pathway in CancerとCytokine and cytokine receptor interaction が同定された。Pathway in Cancerの活性化は、ERK/ARK/NFkBの活性化により、がんの特徴である、血管新生、抗アポトーシス、細胞増殖が活性化されているためと考えられた。Cytokine and cytokine receptor interactionの亢進は、NFkBの活性化によるTNFの産生亢進→TNF経路活性化→サイトカイン産生亢進によるものと考えられた。
 現在のところ、がん原性RASによって発生したがんの治療法として、数多くの抗RAS試薬が提案されているが、成功した治療法はまだ見つかっていない。今回、PP6がERK、AKT、NFkBの活性を抑制することで、腫瘍抑制因子として機能していることを発見した。我々は、PP6 活性化因子は、がんの経路やサイトカイン-サイトカイン受容体相互作用を抑制する新しい治療戦略となるのではないかと考えている。

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