記事のみ印刷する

【論文発表】総合医学研究所 生命科学研究領域/谷口真 講師による総説論文"Role of ceramide/sphingomyelin (SM) balance regulated through "SM cycle" in cancer"がCellular Signalling誌に掲載されました。

 スフィンゴ脂質であるスフィンゴミエリン(SM)は、SM合成酵素(SMS)によって、セラミドとホスファチジルコリンから合成され、細胞膜でSMリッチマイクロドメインを形成し、細胞増殖や遊走、炎症応答の制御に関与します。他方、セラミドはSMからスフィンゴミエリナーゼ(SMase)によって加水分解され、細胞膜セラミドもセラミドリッチプラットフォームと呼ばれるドメインを形成するだけでなく、生理活性脂質として、細胞死や分化、オートファジーなどの制御に関わっております。このSMSとSMaseを介したセラミド/SMの合成サイクルを“SMサイクル”と呼び、セラミド/SMバランスによってSMやセラミドを介した細胞生理作用が制御されます。本総説では、このSMサイクルによって制御されるセラミド/SMバランスが、がん細胞の運命を決定することで、がんの促進や抑制に関わっていることを我々の報告を含めて最新の知見と共にまとめております。
 また、本総説は2019年11月に亡くなられました米国Stony Brook UniversityのLina M. Obeid先生の追悼総説であり、現在、セラミドがアポトーシスを起こす生理活性脂質であることは周知の事実でありますが、その現象を初めて報告した論文がLina先生の1993年のScience誌(Obeid et al. Science, 259; 1769-1771, 1993)であり、このきっかけともなった、白血病細胞HL-60においてビタミンD3による分化の際に、SMaseを介したセラミド産生が重要であり、セラミドが細胞分化を制御する生理活性脂質であることを世界で初めて報告(Okazaki et al. J Biol Chem, 265; 1989)したのが、当時Duke大学へご留学中の本総説の責任著者であり、本学血液免疫内科学 元教授の岡崎俊朗先生(現・石川県立大学 客員教授)です。岡崎先生は、Lina先生の旦那様であるYusuf A. Hannun先生(現・Stony Brook University 教授)がDuke大学にて独立(Department of Medicine)される際の研究室立ち上げをお手伝いし、当時ポスドクであったLina先生とともに隣のベンチで研究を行っていた仲で、また家族ぐるみの親交も深い30年来の友人でもありました。
 
 Lina先生のご逝去はスフィンゴ脂質研究分野にとって大きな損失ではありますが、そのご遺志は世界中のスフィンゴ脂質研究者に継がれております。

詳細はこちら

新着一覧へ