医学部長メッセージ
金沢医科大学医学部の理念は、「生命への畏敬-Reverentia Vitae」です。この理念に基づいて建学の精神に掲げられた倫理に徹した人間性豊かな良医を育成して、知識や技術だけでなく豊かなおもいやりの心を兼ね備えた臨床医を社会へ送り出すことが当大学の役割です。
医師の一般的なプロフェッショナル・キャリアパス・プランとしては、まず6年間の大学医学部での医学教育をうけたのちに医師国家試験に合格し、初期研修の2年間、後期研修の3-4年間を経て各領域の専門医試験を受けるというものです。専門医になった後は様々な可能性が開けてきます。医科大学での教員、研究者、高い最先端技術を有する専門医、総合的な広い知識を有する家庭医、訪問医、さらには厚生労働省をはじめとする行政やWHOなどで国際貢献をする場合もあるでしょう。もちろん医学は目覚ましい勢いで進歩しており、専門医になった後も生涯教育が求められます。
医学部での6年間の学習は医師人生の方向性を決定づける大切な期間です。文部科学省は、各大学が策定する「カリキュラム」のうち、全大学で共通して取り組むべき「コア」の部分を抽出し「モデル」として体系的に整理した医学教育モデル・コア・カリキュラムを公開しています。本学では、このモデル・コア・カリキュラムを基本とし、さらに学生が学びやすいように創意・工夫を凝らした6年一貫統合型カリキュラムを編成しております。
学生はこれにしたがって初年次から得られるいろいろな知識を動員し、正常人体の構造と生理ならびに個々の疾病の病態の理解を深めます。医学教育で最も重要なのはやはり臨床実習です。ここで実際の患者さんの協力をいただき、診断にいたる思考体系と治療学の修得を進めます。教育方法として、当大学では自ら考え・調べ問題解決を導く少人数の学習方法を積極的に導入し、そのための環境整備にも配慮しております。
2014年に竣工した医学教育棟では、知識とともに実技を磨き、考えるための自主学習やグループ学習の習慣づけができるよう、斬新なスチューデントドクター医局(SD医局)やクリニカルシミュレーションセンターを整備しています。オンデマンド等のIT環境とともに第5~第6学年の臨床教育におけるSD医局では、マイ・デスク、マイ・ロッカー、カンファランス室がより充実し、くわえて第1~第4学年の自主学習やグループ学習のための施設としています。
学習評価は、各学年におけるユニット試験・標準試験で行われるとともに、新カリキュラムでは第3学年で全国共通の共用試験(CBT)と実技評価(OSCE)を用いて習得した知識と実技を評価し、第4学年から始まる患者さんと実際に接する臨床実習への適正を判断します。第6学年では、総合的な標準試験、臨床実習、Post-CC OSCEの成績により卒業が判断され、「医師国家試験」に臨みます。
医学教育においては、教員においても学生ならびに社会の要求に対応するため、学生による授業評価、ファカルティ・ディベロップメント(FD)活動などによる積極的な自己研修とともに教育改革を推進し、国際標準化された質の高い医学教育プログラムを通して、良医の育成に努めていきます。
人間性豊かな優れた医師を育成していくため、金沢医科大学は一丸となって取り組んで参ります。明日の医療を担う意気込みを持つ若人が数多く参集されることを希望いたします。