2023/03/08
論文
耳鼻咽喉科学 石倉友子助教の論文「Olfactory regeneration with nasally administered murine adipose-derived stem cells in olfactory epithelium damaged mice」がCells誌に掲載されました
嗅神経は成熟後も変性と再生のターンオーバーを繰り返す特異な神経細胞である。ウイルスや外傷などにより嗅神経細胞が傷害を受けると嗅神経性嗅覚障害をきたし、嗅覚が低下あるいは脱失する。人の嗅神経細胞の再生速度は極めて緩徐であり、回復までに月あるいは年単位の時間を要し、嗅覚が回復しない症例もしばしば経験する。嗅神経の再生には神経成長因子(NGF)が関わっていることが、当教室のこれまでの研究により証明されている。今回の研究では、NGF増強作用のある脂肪幹細胞を直接、嗅神経障害モデルマウス鼻腔内に投与し、その回復効果をin vivoおよびin vitroで観察したものである。マウス嗅粘膜の組織学的観察ならびに嗅覚に対する行動実験から、脂肪幹細胞を鼻腔に投与したマウスでは、障害からの回復が有意に早く、かつ嗅上皮中のNGF発現が有意に増加した。今後、人の嗅神経性嗅覚障害の治療としての応用に期待が抱ける研究結果である。
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