2023/05/15
論文
愛知医科大学 脳神経外科 大須賀浩二教授と解剖学Ⅱ 大道裕介准教授らによる共同研究論文「Angiogenesis in the Outer Membrane of Chronic Subdural Hematomas through Thrombin-Cleaved Osteopontin and the Integrin α9 and Integrin β1 Signaling Pathways」がBiomedicinesに受理公表されました
慢性硬膜下血腫(CSDH)は炎症性および血管新生性の疾患とされ、炎症細胞を含むCSDHの外膜がCSDHの発展に重要な役割を果たしている。オステオポンチン(OPN)は細胞外マトリックスタンパク質で、血液凝固酵素によって切断され、細胞外マトリックス内で積極的にインテグリンシグナル伝達に関与するN末端半分が生成される。我々は、このOPNのN末端半分のCSDH液中での発現と、CSDHの外膜中のインテグリンα9およびβ1および血管新生シグナル経路の下流成分の発現を調査した。CSDHを持つ患者から20サンプルのCSDH液と8サンプルのCSDH外膜を採取し、ELISAキットを用いてCSDH液中のOPNのN末端半分の濃度を測定した。ウエスタンブロッティングでインテグリンα9およびβ1、ビンキュリン、タリン-1、フォーカル接着キナーゼ(FAK)、パキシリン、α-アクチン、Src、β-アクチンの発現レベルを確認した。CSDH液中のOPNのN末端半分の濃度は血清中のそれよりも有意に高く、CSDH外膜内の血管の内皮細胞にインテグリンα9およびβ1、FAK、パキシリンが局在していることが示された。CSDH液処理後すぐにFAKのリン酸化が有意に増加することも明らかになった。これらの結果から、CSDH液中のOPNのN末端半分が、インテグリンα9およびβ1を介して内皮細胞の新生血管形成を促進し、CSDHの促進に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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