腎臓内科学 藤本 圭司 臨床准教授らの原著論文「Predictive utility of nomogram based on serum glucose-regulated protein 78 and kidney function for long-term kidney graft survival」が Scientific Reports誌 に掲載されました。
腎移植後1年目の推算糸球体濾過量(eGFR)は、腎移植片の長期生存の確立された予測因子ですが、その予測精度には改善の余地があります。本研究ではCox回帰モデルを使用して、移植腎機能喪失(Graft loss)のリスク因子を特定し、移植後15年の腎移植片生存を予測する多変数予測モデル(Nomogram)を開発しました。最終的にNomogramに含められた予測因子は、移植後1年時点のeGFRおよび小胞体ストレスマーカーである血清グルコース調節タンパク質78(GRP78)の2つでした。時間依存性ROC解析で評価したDiscriminationに関しては、eGFR単独モデル(AUC-ROC 0.84 [0.67-1.00])とNomogram(AUC-ROC 0.92 [0.82-1.00])の間に統計的有意差は認めませんでしたが(p = 0.38)、Calibration plotで評価したCalibrationは、NomogramがeGFR単独モデルよりも優れていました。以上は予測モデル開発に使用したOriginal dataにおけるApparent performanceですが、Bootstrap法を用いたInternal validation(➡Optimism-corrected performanceを評価)においても同様の結果が再現できました(eGFR単独モデルvs. Nomogram: AUC-ROC 0.73 vs. 0.83, Calibration slope 0.52 vs. 0.80)。さらに、Decision curve analysisで評価した臨床的有用性に関しては、Graft lossというアウトカムの重大性を考慮した場合に重要視すべき低いリスク閾値(Risk threshold probability)領域において、NomogramはeGFR単独モデルよりも明らかに大きな純利益(Net benefit)を示しました。以上の結果から、腎移植片の長期的予後予測における移植後1年時点の血清GRP78の付加価値が示唆されました。
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