臨床病理学教室 大学院生の 劉 堯 先生の論文「The immunohistochemical combination of low SGLT2 expression and high PRDX4 expression independently predicts shortened survival in patients undergoing surgical resection for hepatoblastoma」がDiagnostic Pathology誌に掲載されました
免疫組織化学的な、SGLT2(ナトリウム・グルコース共役輸送体2)低発現とPRDX4(ペルオキシレドキシン4)高発現を組み合わせることによって、肝芽腫術後患者の予後不良を予測し得る
背景:肝芽腫(HB)は小児に最も一般的な肝臓悪性固形腫瘍であり、予後不良な致命的疾患である。したがって、HBの予後を早期に予測できる指標が必要である。ナトリウム・グルコース共役輸送体2(SGLT2)は、近位腎尿細管に存在するグルコース輸送タンパク質であり、SGLT2は腫瘍の進展と密接に関連しており、さまざまな腫瘍で高発現している。一方、ペルオキシレドキシン4(PRDX4)は、分泌特徴を持つユニークな抗酸化酵素であり、細胞質にある小胞体に位置している。我々からも含めた最近の報告により、各種癌の発症・予後と有意に関連性がある。そこで、我々は悪性新生物における、グルコース代謝と酸化ストレスとを結ぶシグナル経路の存在を推察し、SGLT2とPRDX4間の有意な関与を仮説した。
方法:本研究では、75人のHB患者の臨床データと術後パラフィン標本を収集し、ヘマトキシリン・エオジン染色、およびSGLT2とPRDX4の免疫組織化学染色を用いて、それらの発現パターンと臨床病理学的特徴および予後との関連性を分析した。
結果:SGLT2の低発現もしくはPRDX4の高発現は、各々HB患者の生存期間を有意に短縮し、臨床表現形も悪くなることが判明した。さらに、SGLT2低発現とPRDX4高発現が組み合わされると、EFS(無イベント生存率)とOS(全生存率)とも有意に短縮した。単変量および多変量のCox比例ハザード解析により、HBにおけるSGLT2低発現とPRDX4高発現の組み合わせは、術後生存率の独立予後因子であることが示された。
結論:免疫組織化学的な低 SGLT2 と高 PRDX4 発現を組み合わせることが、HB 患者の独立した予後不良因子マーカーの一つとなり得る。今後、分子生物学的なシグナル解析を計画したい。
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