1.フラビウイルスと現代社会



フラビウイルスとは


フラビウイルスは1本鎖のプラス鎖RNAをゲノム(約11kbの大きさ)と するRNAウイルスです。このウイルスに含まれるのは黄熱病ウイルス(YFV )、 日本脳炎ウイルス (JEV)、デングウイルス(DV)などの節足動物媒介性ウイルスです。 日本では発症例は少ないのですが、アジア地域におけるその数は年間10万人以 上におよぶ人達が感染し、苦しめられています。日本におけるJEV感染患者数 (年間)は1950年には5000人をこえるものでしたが、1968年に急激 に低下し、1972年以降現在に至るまで年間100人以下となっています。そ の理由として有効ワクチンの接種と生活環境の整備(媒介蚊の減少)がいわれて います。ただし、ウイルスの分布からみれば、この石川県においても養豚でJE V感染は毎年起こっており、いまなお日本各地にJEVは”生息”しているので す。またウイルス感染が減少した理由については必ずしも明確では無いのです。 ウイルスの病原性、毒性が低下した、という事実は全くありません。従って、何 かのキッカケで日本脳炎が大発生する可能性はあるのです。一度感染がおこれば その症状は深刻で、感染者の致死率は10−30%になるといわれています。

近年、非A非B肝炎の起因ウイルスとして C型肝炎ウイルス (HCV)が同定され、その遺伝子構成から、フラビウイルス近縁であるこ とが明らかにされ、改めてフラビウイルスと社会との繋がりの深さが示されまし た。よく知られているようにC型肝炎は慢性化しやすく、20ー30年に及ぶ長 期間の感染(持続感染)の後、肝癌の発症に至る率も高いのです。現在のところ 癌化のメカニズムは不明であり、今後これを明らかにすることは研究者にとって 重要な課題です。



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