血液・腫瘍グループ

診療内容

 小児血液・腫瘍グループは、伊川泰広教授をはじめ、柳瀬卓也医師、岡田直樹医師、藤澤麗子医師の4名で活動しています。金沢医科大学小児科では、小児白血病や肝芽腫、神経芽細胞腫等の小児腫瘍性疾患の診療だけでなく、再生不良性貧血や先天性好中球減少症、免疫性血小板減少性紫斑病、遺伝性球状赤血球症をはじめとする貧血疾患、血友病等の凝固異常症など小児非腫瘍性血液疾患の診療にも取り組んでいます。
 血液・腫瘍疾患に関しては、金沢医科大学小児科は、日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group:JCCG)に所属し、JCCGが行っている多施設共同臨床研究に参加し、診断や治療を行っています。また、院内では、小児科医や小児外科医、放射線科医、臨床病理医と腫瘍カンファレンスを開催し、診断と治療方針について協議しています。治療を進める際には、医学的な面だけでなく、患者さんやご家族の心理面のケアや、患者さんの学校などへの社会復帰の支援も医師、看護師をはじめ、多職種の方と連携して行っています。
 金沢医科大学小児科は、日本血液学会、日本小児血液・がん学会の研修施設として認定されており、小児科専門医以外に、血液専門医、小児血液・がん専門医を取得することができます。小児の血液・腫瘍疾患の診療に携わってみたいという思いのある方は、遠慮なくご相談ください。みんなで一緒に診療しましょう。

外来のご案内

 血液・腫瘍外来は毎週火曜日と金曜日に行っています。状況に応じて他の曜日でも対応いたしますので、ご相談ください。

基礎研究

 レンチウイルスベクターを用いて、以下の3つをテーマに取り組んでいます。

・DNA修復障害疾患に対する血液腫瘍発症を予防する遺伝子治療前臨床試験の樹立
 先天性DNA修復障害の代表的疾患であるBloom症候群は、健常人と比較して約300倍の発がん性を有し、その約40%に血液腫瘍を発症する。DNA修復障害という疾患特性から、化学療法や放射線療法に対して重篤な副作用を引き起こすため、強度の高い治療を行うことができず致死率が高い。そのため、「がんの発症予防」が根本的な治療法になると仮説を立てた。変異Blm遺伝子の導入により作製されたBloom症候群モデルマウス(Blmマウス)は、放射線照射により約半数が胸腺原発リンパ腫を発症する。そこで、Blmマウスの骨髄細胞に野生型Blm遺伝子をレンチウイルスベクターで導入し、自家移植後に放射線照射を行いリンパ腫発症が予防できるかを検討する。

・McCune-Albright症候群モデル細胞の樹立
 McCune-Albright症候群は、胎児期にGNAS遺伝子の病的バリアントを有する細胞が様々な臓器に分化し広がる体細胞モザイクにより発症する。障害臓器毎に呈する症状は多彩であり、特に皮膚カフェオレ斑(メラノサイト)、線維性骨異形成(骨芽細胞)、思春期早発症(精巣/卵巣細胞)を三徴と呼ぶ。なかでも、皮膚色素沈着は整容面で患者の苦痛は耐え難いが、有効な治療法がないのが喫緊の課題である。そこで、ヒト疾患細胞モデルを樹立することで新規治療法開発の足掛かりにする。

・難治性未分化大細胞リンパ腫に対する新規治療薬開発
 大型リンパ球が大部分を占める未分化大細胞リンパ腫(ALCL)は5年生存率が90%以上と予後良好な疾患である。一方で、ALCL亜型である小型リンパ球が大部分を占めるsmall cell variant (SCV)は、5年生存率が50%にも満たない難治性疾患であり新規治療法開発が喫緊の課題である。近年、造血器腫瘍の領域において、腫瘍細胞が生存に不可欠な分子を標的とした標的治療薬が多数開発され、良好な治療成績が報告されている。しかし、SCVでは詳細な病態が解明されておらず、SCVに対する標的治療薬は開発されていない。SCV細胞株を樹立し分子生物学的病態解明を行うことで、SCVに対する新規標的治療薬の開発を行う。