



本学は、1972年(昭和47年)、医師の需要増大と無医地区解消が重要課題となり、北陸・石川県に日本海側唯一の私立医科大学として創設されました。建学の精神は「倫理に徹した人間性豊かな良医の育成」であり、以来、幾多の困難を乗り越え、医学の発展のため尽力をつくしてまいりました。本学医学部卒業生は4,552名を数え、全国で全人医療を担う良医として医療の中核を担っております。更に、付属看護専門学校、看護学部を併せますと、2,731名の看護師、保健師、助産師を世に送り出し全国の医療現場や看護教育において活躍しております。今後も本学が担う良き医療人養成を使命として成長してゆきたいと存じます。
さて、良医とは、どのような医師を言うのでしょうか。良医とは、他人の苦しみへの思いやりを表現できる医師のことでしょう。初代理事長・益谷秀次先生が開学にあたって、「教育の基本理念は、人間形成と人格の陶冶にあります。本学は、この理念に立脚して――倫理観に徹した人間性豊かな良医を育てる、科学知識の深奥をきわめ、開拓者精神をもって医学の進歩に貢献する、わが国の医学の発展と地域社会の医療開発に寄与する――を建学の精神としております。」と告辞の一節に述べられました。入学1期生である私には、当時その意味する所が十分理解できませんでした。特に、人格とは何かが不明でした。その後、西田幾多郎先生の著書である「善の研究」に出会い“人格とは他人を思いやる心である“と、漸く理解することができました。西田幾多郎先生は、戦前から日本人の精神的支柱であり、本学に隣接しております石川県かほく市ご出身です。北陸の地で思索し続け得られた西田先生の結論です。ゆえに、良医とは他人の痛みや苦しみの思いをはせ、寄り添って行動できる医師なのだと納得いたしました。
では、良医の条件は何でしょう。1つ目は知識・技能を有すること、2つ目は健康な身体を持つこと、そして3番目は困難に立ち向かうタフな精神を有することでしょう。このタフな精神が医療に携わる職業人には特に要求されます。スタッフ間トラブル、医療過誤、ご家族の不満、死亡立会いなどストレスが溜まる現場は少なくありません。医療系学生も勉強量が多く、長時間の実習などで一般学生より多くのストレスがかかり易く、真面目な学生ほど燃え尽き症候群に陥り、不登校や留年、退学に至るケースもあります。現代社会は幼少期から困難や挫折を体験する事が少なく、ストレス耐性が脆弱になってきています。このストレス耐性をレジリエンス(Resilience)と言い、レジリエンスに必要な要素が良き理解者なのです。本学は、これまで困難や逆境を乗り越えてきた歴史があります。また、教職員や卒業生、そして先輩が困難に陥った学生に対し良き理解者になり成長を促してきました。人間の成長は、困難を乗り越えることで打たれ強さを獲得するものであります。この伝統を維持することは、他人を思いやる心の育成に繋がり良医の育成を達成できる要素にもなります。
本学の伝統は、学生と教職員の距離の近さであり、アットホームな雰囲気の中で、共に育つことを実践しております。今後も建学の精神である良医の育成と、高い資質と倫理性を持った看護師の育成に向け、レジリエンスで成長する大学を目指します。

氏名 | 神田 享勉(かんだ つぎやす) |
専門 | 地域医療学、循環器内科学 |
略歴 |
昭和53年 3月 金沢医科大学医学部卒業 |
学会及び社会における活動 | 日本内科学会会員(認定医) 日本循環器学会会員(専門医) 日本糖尿病学会会員(専門医) 日本プライマリ・ケア連合学会会員(認定医・指導医) 日本医療・病院管理学会会員 日本肥満学会(評議員) 日本病院総合診療医学会(評議員) |
賞罰 |
平成 6年 5月 金沢医科大学北辰同窓会賞 平成 7年 2月 公益信託臨床病理学研究振興基金研究奨励賞 平成 8年11月 財団法人黒住医学研究振興財団研究助成 平成10年 9月 第31回成人病研究助成 (三井厚生事業) |