センター長あいさつ

金沢医科大学病院再生医療センター
センター長  堤 幹宏

本学では、日進月歩で発展している再生医療に注目し、本格的な基礎および臨床研究施設である「再生医療センター」を設立しました。
本センターでは、まずがんの免疫療法を行うための樹状細胞ワクチンを作成するとともに、脂肪組織幹細胞による各種臓器の再生医療の研究を進めています。
今後、再生医療学分野での人材育成をも視野に入れ、次世代を支える医療人を育成する教育機関として、努力していきたいと考えております。

1.再生医療センターの概略と特徴

再生医療センターは、1階に細胞の分離・培養を行う細胞調製室(CPC: cell processing center)を2室を備え、細胞受け入れ室、細胞保存室、細胞出荷室があり、きわめて厳密なクリーンな環境で作業が行われています。
本学の細胞調製室の特徴は、側面を耐圧のガラス張りにし、外からも細胞調製室内が見られる開放的なスタイルにしたことです。細胞調製室を備えた医療機関は全国に多数ありますが、ガラス張りにすることにより、孤独できわめて繊細な作業を行う細胞培養士の精神的負担が軽減されるだけでなく、本学医学生が細胞調製の過程を実際に見学することで最先端の再生医療を実感し、医学に対するモチベーションも高まるものと期待しています。
2階には、再生医療の臨床および基礎研究ができるように、最新の機器を備えた広い研究室が設置されました。再生医療センターの研究室は、基礎と臨床、各診療科の壁を越えたすべての臓器・組織の再生医療に取り組むためのものですが、同時に、若手臨床医に研究の場を提供し、研究方法等をサポートするための体制も整え、本学の研究の活性化につなげたいと考えています。

2.本学が目指す再生医療

臓器再生には、受精卵を用いたES細胞(embryonic stem cell: 胚性幹細胞)やiPS細胞(induced pluripotent stem cell: 人工多能性幹細胞)などの多能性幹細胞を使う方法と、各臓器・組織に存在する組織幹細胞を用いる方法があります。
多能性幹細胞を使えば、理論的にはすべての臓器の再生が可能ですが、まだ治療法が確立されているわけではありません。受精卵を利用するES細胞には倫理的に問題あるだけでなく、拒絶反応が伴います。また、遺伝子を導入するiPS細胞にもがん化のリスクがあり、今後の大きな課題です。一方、組織幹細胞は、所属する臓器・組織の維持、修復、再生に使われていますが、他のさまざまな臓器・組織の再生にも関与することが明らかになってきており、すでに臨床応用も始まっています。
このような状況をふまえ、本学の再生医療センターでは、実現可能な臨床に直結した再生医療を目指すことを目的としています。体性幹細胞にはさまざまな種類がありますが、われわれは、脂肪肝細胞に着目しています。骨や血管、心筋、肝臓などに分化する幹細胞が多く含まれているほか、人体からの細胞採取が比較的簡単であること、脂肪組織からの幹細胞の分離もキット化されていることなど多くのメリットがあります。すでに、イタリアを中心にヨーロッパ、米国で変形性膝関節症、便失禁、糖尿病性皮膚潰瘍・壊死等々の治療に用いられています。本学では、まだ実用化されていない内臓系の再生医療に取り組み、肝硬変や心筋梗塞、食道、胃、大腸の早期癌切除後の狭窄予防・修復など研究を行いたいと考えています。
樹状細胞ワクチンについては、平成28年7月7日からがん患者さんに対して免疫療法を開始しています。