教育

メッセージ

耳鼻咽喉科科長(三輪高喜 講座主任)のメッセージ:

ポリシーは患者さんの病気を治すのではなく、患者さんを治すこと。そうした気持ちをもった医師を目指して欲しいです。また、五感に関連する分野を専門にしている者として、皆さんには感性を大切にして欲しいと思っています。

はじめに

 本学の建学の精神「良医を育てる」の良医としての行いを例えれば「ノブレスオブリージュを全うする紳士的振舞」といえます。日本海沿岸にそびえ立つ白亜の学舎を有する我が金沢医科大学は、「紳士的振舞」,「科学的合理性」および「国際性」を教育目標に掲げたかつての高等教育機関の校風になぞらえることができるかもしれません。当教室における主な教育目標は上記3点に「感性」「専門性」を加えた5点が上げられます。
 細分化された現代医学において対象疾患も治療手法、コンセプトにも大きな隔たりを感ずるほどの長足の進歩をこの四半世紀の間に遂げた耳鼻咽喉科と頭頸部外科ですが、基本となる診療形態は今も伝統的な意味での「耳鼻いんこう科」のなかの外来診療に存在します。従って学部教育, 初期研修および専門研修を通じて外来研修(実習)がプログラム内容の中心を占めています。当教室における教育プログラムの特徴はまず「耳鼻咽喉科総合診療医」の養成に重きを置いている点であります。
 我々の考える「耳鼻咽喉科総合診療医」教育では一人だけの医療局面におかれても、耳鼻咽喉科全般の疾病に対し専門医へ転送するまでの間、必要な検査や治療を自ら行った上で専門医に紹介出来る知識と技術を有する医師を育てることが目標です(建学の精神:知識と技術をきわめる)。専門分野毎に非常に細分化が進んだ時代にあって、このような総合診療医的な医師こそが耳鼻咽喉科においても特に求められているのではないでしょうか(建学の精神:社会に貢献する)。
 筆者がかつて米国留学中知り合った元海兵隊大佐が、「海兵隊員は全員がライフルマンである。最後の一人になっても仲間の援護を待ちながら戦闘を継続する意思と能力を持っている」と語っていました。我々に置き換えれば専門医の援護を待ちつつ一人になっても治療の継続をあきらめない「耳鼻咽喉科医」に全員を育てることであります。
「耳鼻咽喉科総合診療医」としての証は日本耳鼻咽喉科学会専門医への認定であり、専門医認定後の各分野のエキスパートへの到達はつまるところ個々人の努力にかかっていると我々は考えております。そしてエキスパートへの到達に必要な環境整備には援助を惜しまないことを約束します。

(大学院担当教員/臨床研修指導医 志賀英明)

大学院教育(医学博士課程)プログラム

感覚機能病態学

研究指導教員:三輪教授
科目担当教員:志賀准教授

学習目標

(1) 一般目標
豊かで、質の高い生活を営むために視覚、聴覚をはじめさまざまな感覚の重要性、また咀嚼、嚥下、発声のような人間らしい生活を営むための機能の重要性があらためて認識されてきている。本科目はさまざまな感覚器の形態、機能を根本に、各種疾患の病態、診断、治療について専門的な分野での高度な知識、技法および指導力を持つことを目標とする。
(2) 行動目標
嗅覚、味覚系の基本生理、病態を学ぶ。 機能温存、回復を目的とした感覚器手術の重要性を学ぶ。

プログラム内容

(1) ポイント
臨床医学の分野は日進月歩の早さで進歩しており、常に新たな医学知識を吸収し、日常診療に取り入れる積極性がなければ専門的医療への従事は困難です。特に海外における最新知見をいち早くキャッチするためには、語学力を含めた情報収集能力が現代の専門診療医には最も必要とされるスキルです。さらに、目の前の現象を客観的データとして捉え、統計的に解析し判断する能力もEBM医療の時代には不可欠です。また、最新の診断システムや新規薬剤の作用機序などを理解するうえで、分子医学などの基礎医学の知識は大きな助けとなります。以上から我々が大学院教育で目標とするポイントは、科学的合理性と国際性を身につけることであり、それが良医への成長の一助となると考えております

(2) 研究テーマ
原則として「嗅覚障害」の範囲で現在進行中の研究プロジェクトに沿った内容の研究テーマのなかから選択していただきます(詳細は研究のページを参照下さい)。学位取得後、各自が自身の目指す研究テーマを専攻し研究を推進する上では、指導や協力を惜しみません。しかし、大学院教育においては、まず研究のプロセスを理解し経験することが大事であり、自由な研究テーマの選択は応用編と考えております。

(3) 学位取得までのプロセス
4年間の間に所定の授業科目を取得し、研究課題に則って学位論文を作成し、論文審査に合格することが必要です(詳細は本学ホームページ大学院の項目を参照)。原則として昼夜開講制を利用して病院勤務と並行して大学院教育を受けられるよう配慮しております。従って大学院生であっても病院や大学職員としての福利厚生を得ることが可能です。最初の1年次より大学が開講する講義や実習の単位取得と並行して、指導教員との討論や予備実験により研究テーマについて考察していただきます。2年次以降実験を指導教官と共に遂行し、データを蓄積していき統計解析等を行って、3年次の終わりの予備審査の準備をすすめます(英文雑誌への投稿を予定している場合予備審査は免除されます)。入局2年目は通常関連病院へ出向しますが、毎週1日の帰学日に研究を継続することが可能です。4年次は主に学位論文の作成に従事し、学会発表も行っていただきます。4年次の後半までには学位論文を医学雑誌に投稿し、掲載可の結果をもって本審査の準備に臨みます。本審査後、教授会の決定を経て年度終了時に学位記が授与されます。昨今の国際化の時代背景に鑑み学位論文は査読を経た英文論文であることが、大学院修了の条件として推奨されます。

(4) 生活面
社会人大学院生として専門研修と同時に単位履修が可能です。従って病院職員として勤務しながら研究を遂行可能です。まず1年次より研究テーマを考察しながら予備実験をすすめていただきます。臨床研究の場合は生理学的検査や画像検査のデータを収集します。早い時期に実質的な研究を開始し大学院修了が遅れないよう配慮しております。また臨床研修とのバランスを取りながらの研究生活になりますので大学院に入学しても研修が遅れることはありません。関連病院への出張業務にも特に支障はないスケジュールとなっています。さらに2年時以降は原則、毎週1〜2日研究日を配しております。家庭の事情等で基礎実験への従事が困難な方には、臨床的テーマで研究を遂行することにより、日中の活動のみで研究データが得られるようサポートしております。

(5) 海外との共同研究
現在海外の研究協力機関として嗅覚障害の臨床研究の分野で著名なドレスデン工科大学医学部耳鼻咽喉科のヒュンメル教授の研究室への留学や短期訪問も可能です。そのほか、ハーバード大学関連病院でマサチューセッツ眼科耳鼻科病院のホルブルック准教授とも協力関係にあります。通常は学位取得後にポストドクトラルフェローとしての留学が一般的ですが、3年次までに学位論文の目処が立った場合は、4年次に留学することも可能です。留学期間は、臨床研修とのバランスが良いのは1年から1年半程度です。渡航費や滞在費獲得へのサポートも行います。
海外留学の利点は帰国後も海外の学会への参加がしやすくなり自然に高いレベルでの医療技術や研究レベルを志向するようになることです。語学力や異文化コミュニケーション能力のアップも期待できます。世界で活躍する医学研究者を目指す若人の入学を待っています。

初期臨床研修プログラム

金沢医科大学病院 臨床研修センター(初期臨床研修案内)

後期臨床研修プログラム

プログラム概要

令和5年度(2023年度) 金沢医科大学病院耳鼻咽喉科 専門研修プログラム

一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門研修プログラム