医師は生涯にわたっていかなる場面にも対応しつつ医療に従事して行かねばならない。そのためには、学生時代に研究心と創造性を身につけることが大切である。本学の教育では、少人数教育に主眼を置いた教育方法を積極的に取り入れて問題解決能力の開発に力を入れている。

本学の医学教育機能は、従来各講座に一任され行われてきたが、医学教育コア・カリキュラムを基盤とした統合型カリキュラム(integrative curriculum)の採用によって、学長を中心とする教学主体の管理体制に移行して教育の一貫性の保持と効率化を図ることになった。これを実施する場として、病院本館3階に学長の直轄組織となる医学教育センターを設置した。
ここには教務部と医学教育・情報学の機能を統合してあり、授業の改善、教育効果の検証、教材開発、臨床スキル訓練、試験問題管理、成績評価の標準化、 FD(FacultyDevelopment、教員の教育能力開発)などを担当する。
同じフロアには、Bedside LearningおよびClinical Clerkshipに入る第5、第6学年学生の自習室、看護専門学校臨床実習施設などを設置し、また同本館4階に設置の臨床研修医センターとも一体となって教育効率を上げる効果が期待されている。

医学教育では、スモール・グループでの学習を随所に取り入れて個々の学生の興味を刺激する教育を行うことが大切である。そこで形成される師弟の関係が、人間性豊かで技量にすぐれた良医の心と技を育むことになる。
カリキュラムには、6年間を通してキメ細かな教育体制で質の高い人材の育成をはかるため、少人数教育の機会を多く取り入れている。

テュートリアル形式で行うPBL(problem-based learning, 問題立脚型学習)のことで、問題解決能力の育成を目的に導入されている。
最初に問題(たとえば症例)が提示され、学生は提示された症例の病態生理を推測し、関連する基礎医学、社会医学及び臨床医学の情報を種々の手段で調べ、それを統合して診断と治療にいたる過程を自己の力で学習し、その結果を発表し、討論しながら問題点を整理し、解決していくというプロセスで学習が行われる。
教員はテューター(tutor)として助言を与える立場をとる。1グループ8名程度の少人数教育で行う。

医療の問題や、医学の日進月歩の発達が国際規模で論じられる現在、医師は国際語として機能している英語を使えるようになる必要がある。
コンピュータソフトを活用して、臨床や基礎医学のスタッフをテューターとして、少人数グループで英文に慣れ、英語で医学を理解する訓練を行う。
本学での英語教育は、医師に実際必要な英語力を修得させることを目標としており、そのための海外研修制度もある。

資料や文献の検索にはコンピュータを用い、本学病院ではカルテはすべて電子カルテとなり、オーダリングもコンピュータを通じて行われるというように、現代の診療活動、研究活動や、学習活動においては、情報の扱いにコンピュータなしでは済まされない。
本学ではこのような時代の要請に対応していくために、第1学年に「情報の科学」を導入し、学生がコンピュータの基礎概念を理解し、コンピュータを情報入力、情報収集、情報処理および表現の手段として自由に活用できる素地を養う。

本学病院では、世界に先駆けて大病院型電子カルテシステムを開発し全面採用してきている。これに伴い、ClinicalClerkshipの学生には患者の医学的情報のみを開示し、個人情報を遮蔽した学生用電子カルテの使用が許可される。
各病棟には病室に隣接して実習室が設置されており、学生用電子カルテシステムにより、症例の各種検査データや画像を読むことができ、症例の問題点を明らかにし、解決策を主治医とともにコンピュータ上で考察したり論議し、実際に患者への面接や処置や検査に立ち会う。

大学における教育では、既製品の教材のみではなく、教師自身が作成した「生」の材料を用いることが大切である。
生の教材は学生へのインパクトが強く、また学生に開拓精神を育む大きな動機にもなる。教師による「生」の教材の作成や学会発表の資料作成には、学内の整備されたフォトセンターが幅広く技術的なサポートをしている。また、基礎医学・臨床医学の実習、臨床講義における症例提示、手術供覧などに、TVモニター、ビデオ供覧、コンピュータによる提示システムなどの最新の機器と技術が整備され利用されている。

教員の教育に関する意識を高めることは教育効果を高めるために最も重要であり、本学では平成2年から、教員の「医学教育に関するワークショップ」を開催している。
目的は、教員が本学の教育方針を十分に理解し、それぞれの教員が持っている教育の方法、教育技法の一層の向上を図ることにある。
ワークショップでは、どうすれば本学の学生に最も効果的なよい教育ができるかという主題のもとに、種々の面から検討するようテーマを選んでいる。各グループによる発表、討論、提案などが行われ、その結果はワークショップ報告書として発行され、実地に活かすべく全教員に配布され利用されている。
実際にワークショップに参加した教員は、いずれも医学教育に対する認識を新たにすると同時に自己の研鑚を積む機会として非常に有意義であったと述べている。

学生が教員との話し合いの機会を設定しやすくするために、全教員には、週に少なくとも1時間は学生と自由に面談できる時間を設定することが義務付けられている。
本学の学生は誰でもこの時間帯なら予約なしに教員を訪ね、学科目についての質問や個人的な問題の相談ができる。また、学生と教師の間のコミュニケーションにはe-mailが使用できる。

在学中は、学年主任、指導教員として複数の教員が各学生を受け持ち、学習指導や日常生活指導などにあたる。人間同士のふれあいを重視し、将来、医師として患者に接するのに大切なコミュニケーション態度を磨くのにも有意義である。

全学の教員が一堂に会して、教育に関する問題、悩みを自由に討論する場である。学長以下全教員が、テーマによっては学生も参加する形で年に3〜5回程度開催される。
大学の方針としての学長の考えが教授会メンバー以外の教員にも直接伝わることや、教育現場の声が大学のトップに伝わる点で有意義な集会として位置づけられている。

学生による各授業の評価は、毎年度末に全学生からのアンケートの形で行われ、教員が行っている授業についてのフィードバックに役立っている。
大学の自己点検、自己評価の一環として学生間にも定着しており、調査結果は約60頁の報告書として公表され、教授、准教授、講師の全員に配布される。平成8年度には5年間のまとめが、平成12年度には過去9年間のまとめが刊行された


