水晶体・白内障研究グループ

研究紹介

水晶体・白内障研究グループ

われわれは、白内障メカニズムの解明および白内障予防、治療薬の開発を目指した研究を行っています。この研究によって、白内障手術によらず、視機能を保ちながら老後が過ごせるようになることが目標です。 また、白内障術後に生じる後発白内障の発症予防についての研究も行っています。2014年4月から大学院生2名を加えさらにパワーアップしました。みんなで臨床と研究を両立させながら、臨床応用できるようなトランスレーショナルリサーチを目指します。

研究メンバー
責任者:久保江理、佐々木洋、柴田伸亮、長田ひろみ、柴田哲平
研究補助員:2名

参加ストレス予防をターゲットとした抗白内障研究

白内障の発症には、加齢、紫外線、放射線、糖尿病などによる血糖上昇など種々の成因があります。それらすべてにおいて眼内で酸化ストレスが発生し、水晶体を傷害し白内障を誘発しています。水晶体には、抗酸化物という酸化ストレスを消去する機構があり、ストレスを防御していますが、加齢によりその防御能が低下してきます。よって、水晶体の抗酸化蛋白ペルオキシレドキシン6による白内障予防効果およびスルフォラフェンやプロポリスなどサプリメントによる抗酸化能誘導効果と白内障予防効果について、白内障モデルや培養実験にて検討しています。

発表論文(2013):Chhunchha B, Fatma N, Kubo E, et al. Am J Physiol Cell Physiol. 2013;304(8):C808-9.

後発白内障発症メカニズムと予防に関する研究

ラット後発白内障1週間目 トロポミオシンは、増殖し繊維芽細胞様変化を呈する水晶体上皮細胞に局在(矢印)

白内障手術後には、数カ月から数年後に残存した水晶体上皮細胞が、増殖、分化、線維化を生じ水晶体の後嚢が混濁してしまう、いわゆる後発白内障を発症することがあります。それにより、視力低下や視機能低下を生じます。 われわれは、後発白内障モデルを作成し、後発白内障時に水晶体上皮細胞でトロポミオシンという遺伝子の発現が上昇し、発症原因の1つである可能性を発見しました。このトロポミオシンをターゲットとした予防法の研究を、後発白内障モデルや培養実験で検討しています。

発表論文(2013):Kubo E, et al. J Cell Mol Med. 2013;17(1):212-21.

microRNAによる水晶体上皮細胞の遺伝子制御と白内障発症に関する研究

加齢白内障では、水晶体上皮細胞の遺伝子変化を引き起こされ、水晶体混濁つまり白内障を発症すると推測されます。近年、今までは重要性が明確でなかった、蛋白質をコードしない領域の転写に由来するnon-coding (nc) RNAの存在と意義が明らかになってきました。non-coding領域から転写される機能性RNAの一つとして、蛋白質コード遺伝子のsilencingに働くmicroRNA(miRNA)があり、そのRNA機能は多くの生理過程の制御で基本的な働きを任なうことが明らかにされています。われわれは、水晶体の加齢および白内障発症に関与するmiRNAの発現とその機能および標的遺伝子を検討し、白内障発症におけるmiRNAの意義や新しい白内障治療の可能性について研究を進めています。

発表論文(2013):Kubo E,et al. J Cell Mol Med. 2013;17(9):1146-59.

共同研究

University of Nebraska Medical Center, USA: Dhirendra P, Singh教授:実験データの意見交換し、ぺルオキシレドキシン6や転写因子lens epithelial derived growth factorなどに関して、当研究室で保有する白内障モデルを用いて共同実験も行っています。

発表論文(2013):Bhargavan B, Chhunchha B, Kubo E, et al. Epigenetics. 2013;8(3):268-80.

金沢医科大学腫瘍病理学 清川悦子教授:水晶体関連の共同研究、免疫染色や動物実験など大変お世話になっております。いろんな実験機器や試薬も使わせてもらっています。

長田先生は、金沢医科大学生化学IIの米倉秀人教授と、眼の機能維持と病態発生の分子機構の解明について、共同研究を行っています。

近畿大学薬学部 伊藤吉將准教授、長井紀章講師:ヒト水晶体上皮サンプルを使用したAβ蓄積と酸化ストレスに関する共同研究を開始しました。